ドイツの仕事生活で頻出!ドイツ語の中の英語 “Denglisch” を解説します
「アサイン」「アジェンダ」「コンプライアンス」…英語由来のカタカナ語は、日本のビジネスシーンでよく使われていますよね。日本語の場合、カタカナという便利なアルファベットのおかげで外来語の取り入れに障壁がありませんが、実はドイツも外来語に対してわりと柔軟なようで、ビジネスシーンや日常会話で英語由来の単語が多く取り入れられています。
そんな「独製英語」は「デングリッシュ(Denglisch)」と呼ばれ、1965年くらいから使われていたと言われています。デングリッシュはドイツ語(Deutsch)と英語(Englisch)を繋げた造語で、“English made in Germany”とも呼ばれます。今回は、ドイツのビジネスシーンで頻出するデングリッシュと、その使い方を紹介します。
デングリッシュの種類
デングリッシュには、大きく分けると
(1)名詞
(2)形容詞・副詞
(3)動詞
(4)文・フレーズ
の4パターンがあります。ドイツ語は英語と違った動詞の語尾変化をするので、英語の動詞とドイツ語の語尾変化がミックスされた形になるのが面白い点です。また形容詞の場合も、英語にはない「性による形容詞の語尾変化」が反映されます。
(1)名詞
名詞系のデングリッシュで多いのが、コンピューター/インターネット関係の用語。ドイツ語ならではですが、外来語の場合は冠詞が後付けになるので、ラップトップ(Laptop)やアラート(Alert)のように男性名詞扱い(der)でも中性名詞扱い(das)でもどちらでもOKという場合があります。TwitterやInstagramなどサービスや商品の固有名詞は冠詞なしで使われることが多いです。
【例】
der Computer(≒ der Rechner)
die Harddisk(=die Hartplatte)
das Internet(≒ das Netzwerk)
das Ego-Googeln der/das Laptop das Meeting(≒ die Zusammenkunft)
das Theme(≒ das Thema)
das Issue(≒ das Thema, das Problem)
das Briefing(≒ die Besprechung)
Performance(≒ Leistungsvermögen)
die Bordmittel(≒ eigene Mittel)
※複数形 der/das Alert(≒ die Meldung) die Deadline(≒ die Abgabefrist)
(2)形容詞・副詞
形容詞のデングリッシュは、ドイツ語の形容詞と同じく修飾する名詞の性によって語尾変化します。また、比較級や最上級として使われる場合も“-er als”や“am -sten”を付けて変化させます。
【例と使い方】
online (例文)Ich bin immer online.
absolut(≒ total) (例文)Das ist absolut unmöglich.
cool(≒ modern, schick) (例文)Deine Idee ist ja cooler als meine.
proaktiv(≒ Initiative ergreifen) ※事前に対策を講じること (例文)Die Managerin hat proaktiv gehandelt.
pending (例文)Das ist noch pending. busy (例文)Ich bin gerade total busy.
safe(≒ geschafft) ※ひと仕事終えて、もうトラブルが起こらない状態のこと (例文)Wir sind safe.
(3)動詞
動詞にもドイツ語ルールが反映されるので、現在形は主語によって語尾が変化します。過去時制には“ge-en”や“ge-t” といった語尾変化が起こります。
【例と使い方】
downloaden(=herunterladen)←→ uploaden(=hochladen) (例文)Ich habe diese Datei von der Seite downgeloadet.
canceln(=absagen) (例文)Mein Flug wurde geancelt.
updaten (例文)Wir haben alle Informationen upgedatet.
googeln(=bei Google suchen) (例文)Hast du schon gegoogelt, was das bedeutet?
twittern (例文)Er hat über das gestrige Spiel unter dem Hashtag #FRAFCB getwittert.
comitten ※何かについて合意すること (例文)Dazu müssen wir uns erst noch comitten.
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(4)文・フレーズ
英語のフレーズをそのまま転用しているものと、英語とドイツ語を混ぜたオリジナル(Bio-Breakなど)のパターンが見受けられます。
【例と使い方】
day off(=frei、Urlaub) (例文)Ich nehme heute einen day off.
must have (例文)Das sind die neuen Must Haves.
Bio-Break(≒ Frischluftpause) (例文)Nach dem Meeting gehen wir Bio-Break.
auf die Watchlist setzen ※とりあえず様子を見ること (例文)Das Problem setzt auf unsere Watchlist.
ohne Conectivity (例文)Ich war am Wochenenede leider ohne Conectivity.(≒Ich war am Wochenende nicht erreichbar.)
fine with me (例文)Das ist fine with me.(≒Das ist in Ordnung. Ich bin einverstanden.)
Leadership-Aufgabe ※上司/マネジメントマターである事柄 (例文)Das ist eine Leadership-Aufgabe.(≒Das ist Chef-Sache.)
on the same page sein ※同じ認識でいること (例文)Ich will, dass alle on the same page sind.(≒Alle sollen auf dem gleichen Wissenstand sein.)
デングリッシュが重宝される理由
このようにデングリッシュが広く取り入れられている理由として、以下の3点が考えられます。
(1)代替がない(サービスや商品の固有名詞)
(2)英語の方がかっこいい(若い世代がスラング的に使う)
(3)英語の方が浸透している/分かりやすい
(1)のパターンは替わりがないので使わざるを得ないという理由がありますが、(2)や(3)のパターンではドイツ語で同じような意味を表す単語があっても英語が好まれて使われています。例えば(2)の場合、日常会話の中でよく聞くデングリッシュの代表格“cool”はドイツ語にも近い意味の“modern”や“schick”といった単語がありますが、“cool”の方がより砕けた印象や響きのカッコよさをかもしだせるので若い世代は好んで使っています。(3)の例としては、冒頭で紹介したコンピューター関係の名詞や、“Eye-Contact”(=Blickcontact)、“To-Do”などが挙げられます。
注意すべきデングリッシュ:英語と意味の違うもの
ドイツで浸透しているデングリッシュの中には、本来の英語と違った意味になっているものもあります。英語圏の人との会話で使っても通じない可能性が高いので注意しましょう。
【例】
Home-Office(=Heimarbeitsplatz、Heimbüro) 英語圏では:WFH(working from home)
homeworking das Handy(=Mobil-Telefon) 英語圏では:mobile phone(UK)
cell phone(US) die Mailbox 英語圏では:voicemail das
Public Viewing 英語圏では:public/outdoor screening
ドイツのビジネスにおいてはドイツ語が使用される、という先入観があるかもしれませんが、実際にはこのように英語や英語から派生したドイツ語が用いられることが少なくありません。ドイツ人だけでなく、各国から集まった優秀な人材が様々な言語を用いてビジネスをおこなうのがドイツという国の特徴です。そんなダイナミックな環境で自身のキャリアアップを目指してみるのも良いかも知れませんね。
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