ドイツ転職にまつわる日本人のよくある誤解とは?
ドイツへの転職と聞いてどのような印象を抱くでしょうか?実力主義で就職の際に年齢は問わず、外国人労働者にもチャンスが多い?労働者天国でクビになりにくい?実際には我々が映画やドラマの世界から我々の抱く華々しい「ヨーロッパ企業」のイメージとは裏腹に、実際に現地での就職活動には苦労や失敗話がつきものです。にもかかわらず、暗いテーマには目をつぶってしまい、ドイツでの就職を目指す人の中には、数多く「ドイツ転職幻想」に魅了されてしまっているケースが少なくありません。
実情を知り、正しい「ドイツ転職」を理解してこそ、内定が、ひいてはキャリアアップの道がドイツで開けるといって良いでしょう。
ドイツ移住・転職に失敗しやすい思い込み
勿論、ドイツへの転職活動失敗の中には「応募要件を満たしていない」「就労ビザが無い」といった根本的な要因であることも少なくありませんが、それ以前にドイツ就職に対するある種の思い込みが、就活の方向性をまずい方向性に導いている可能性も否定できません。
まずは、以下にあげる4つの思い込みを元に、どのような「勘違い」がドイツ就活の目測を曇らせるのか確認していきましょう。
ドイツ語を習得したらドイツに転職できる
ドイツ転職を志す日本人の中でよくある考えの一つに「ドイツ語を話せればドイツで就職できる」というものがあります。実際にこの考えに則って、ドイツで長期語学留学などを通じドイツ語を身につけようとする渡航者も多々見られますが、この思い込みが危険なことは、母国語での就職事情を鑑みればすぐに理解できるかと思います。要するに、日本語ができても日本での就職が保証されるわけではないのと同様、ドイツ語が話せたからといってドイツで就職できる保証はどこにもないのです。
では、ドイツ語を勉強しておく必要はどこにもないのでしょうか?決してそういうわけではなく、むしろドイツ語は一般的なドイツ企業で就職活動する際の「必要応募条件」と見なされがちです。我々日本人が日本で就職する際に長所として「日本語ができること」を挙げたら不自然なのと同様、ドイツにおいてドイツ語ができることは誇れる長所ではなく、できて当たり前の必要スキルと見なされてしまうケースが非常に多いのです。応募者のライバルとなる他ドイツ人の応募者は、ドイツ語を話せるうえに大学や専門学校で身に着けた会計や医学や法学の専門スキルを身に着けているわけで、ドイツ語だけできても仕事は見つかりづらいと言わざるを得ないでしょう。
(逆に、中にはドイツ語不要で応募可能な求人も存在します。詳細は「ドイツ語不問のドイツ就職」の記事を参照ください)
ドイツで大学を卒業したらドイツで就職できる
ドイツで大学、大学院を卒業すると確かに就労ビザや就職サポートの点で大きなアドバンテージを得ることができるため、一概に的外れな考えとも言えませんが、ここには日本人が過小評価しているドイツの教育システムのハードルが潜んでいます。
第一に、ドイツにおける大学卒業までの難易度が日本の大学と比較して極端に高いことが挙げられます。日本の中途退学者の割合は全体の10%弱であるのに対し(参照:日本産学フォーラム)、ドイツ大学生の中途退学者の割合は学部生全体で28%、専門大学を除いた一般的な大学生に限れば33%に上り(参照:DZHW)、10倍近い開きがあることが示されています。
第二に、卒業時の成績です。折角苦労して大学を卒業しても、ドイツでの就職経験を持たない新卒学生に対し、多くの大手企業が大学の成績や研究実績による足切りをおこないます。単に卒業するだけでも難易度が高いのに、そこにさらに優秀な成績で、大きな留年なしに、という条件が加えられると、実際にほとんどの日本人学生がこのハードルを越えることができません。この条件をクリアし、ドイツ人による厳格な面接プロセスを勝ち抜いてはじめて、晴れて内定を得るわけです。
最も、内定を得た後も一安心はできません。ドイツ社会は実力ヒエラルキー主義で、新卒キャリアは「インターン」や「学生アシスタント」といった下積みから開始されます。仮に就職できたとしても、一人前と見なされる(一般的には5年前後)まではジュニア枠として扱われ、給与や権限面は限られたものになり、ドイツ渡航前に思い描いていた「ドイツ企業できらびやかなキャリア」とはかけ離れたものになる可能性も否めません。
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仕事が見つかればドイツに転職できる
我々日本人が日本で就職する場合、仕事さえ見つかれば基本的には就職とセットで考えられることでしょう。仕事が見つかったのに働けない、健康チェックに引っかからない限りそんな事態には陥らないはずです。
一方でドイツの事情はどうかというと、我々日本人は「就労ビザ」の存在を忘れてはいけません。いくらポジションが見つかって、いくら面接で成功したとしても、労働契約書の双方のサインがなされ、就労ビザが発行されるその瞬間まで、一息つくことができないのです。
就労ビザ周りの事情は、やはり日本人を採用するケースの少ないドイツ人人事担当者では疎いと言えます。そのため、内定は得たけど、仕事の開始日までに就労ビザが手に入らず、仕事がはじめられない、といったトラブルもたびたび発生します。
こうした就労ビザ周りのお話しに関しては「【海外就職の現実】日本人がドイツで就職するのは難しいって本当?」の記事を参照してください。就労ビザ発行手続きやEU市民とは異なる処理を嫌うため、日本人(外国人)の採用を躊躇するドイツ企業は多いと言えるでしょう。
雇用は安定していて簡単にクビにならない
数々のハードルを乗り切り晴れてドイツ企業に内定を得て、無事仕事が開始できたとしても、まだ安心はできません。一般的に、ドイツ企業では新規採用後に最長半年の「試用期間」を設けており、この試用期間では労働者は厳しい査定評価を行われ、簡単にクビを宣告される、雇用の保証が極めて不安定なことで有名です。
この厳しい試用期間が設けられている理由はいくつか挙げられますが、最たる理由として挙げられる理由が、ドイツにおける長期労働者の法的保護が整えられており、一度長期契約を結ぶと簡単にクビにはできなくなるため(従業員数による解雇保護法適応外の例外を除き)、長期契約を結ぶ前の試用期間や単年契約時に、パフォーマンスの残せそうにない人材を切り捨てる必要がある、というものです。そのため、試用期間における解雇の確率は極めて高く、一般的に20~25%程度とも言われています。
また、試用期間を終えたからと言って即座に無期限労働契約を会社側から結んでもらえるとは限りません。場合によっては最初の2年ほどは契約満了時に解雇しやすい短期契約で様子見をされ、雇用の安定した無期限労働契約を結べるまで時間がかかるケースも多く見受けられます。
日本人がドイツ移住・転職を成功させるには?
さて、色々とドイツ移住や転職に対して暗い気持ちになるようなネガティブな事実を多く羅列してしまいました。
- ドイツ語ができてもドイツで就職できるとは限らない
- ドイツで大学・大学院を卒業しても就職できるとは限らない
- そもそも卒業が難しい
- 内定後もトラブルなく就労ビザが取得できるとは限らない
- 就職後も最初の1~2年はクビを宣告される可能性が低くない
もっとも、こうしたネガティブな事実は、あくまでドイツの一般企業に就職する際のハードルで、元々日本に資本的バックグラウンドを持ち、日本人の採用に積極的なドイツ在住の日系企業ではその事情は180度異なります。
どんよりと濁って見えたドイツ就職の道に、日系企業という選択肢を追加するだけで、希望の光が差すように思えないでしょうか?
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