ドイツとイギリス、海外就職を志すにはどちらが簡単?
イギリス、ドイツ、フランス、スペイン、北欧に中欧、南欧とヨーロッパには様々な魅力的な国があります。ヨーロッパ移住を目指している人の中には、興味のある文化や言語が先に来て、特定の国を目指す人もいれば、ヨーロッパ移住を目指してその人が行きやすい国を目指す人もいます。もちろん移住を目指す国が決まっていれば迷うことはありませんが、決まっていない場合はある意味でどこを目指すか選択の余地があります。
そこで今回は、日本人が欧州の中でも移住しやすいドイツとイギリスを、メリット、デメリットを含めて比較して見たいと思います。
※本ブログに書かれた内容、特にビザなどの話はあくまで一般論です。最終的な判断は現地の外人局などに委ねられるためご注意ください。また、情報は2022年10月現在のものです。
ヨーロッパ移住から考えるイギリスとドイツ
そもそもなぜドイツとイギリスの2カ国かという点のお話しですが、ヨーロッパの在留邦人数トップ2カ国がイギリスとドイツなのです。外務省が公表している「海外在留邦人数調査統計」によると、海外在住日本人の各国の数値の中で1位がアメリカ、ヨーロッパ勢を見るとイギリスが6位、ドイツが8位、フランスが10位となります。
イギリス、ドイツ、フランスは統計上ヨーロッパで日本人が一番多く住んでいる国のカテゴリとなります。参考程度ながら、在留邦人数はヨーロッパの中でもピンキリで、上述の三か国に比べると、中東欧に在留している邦人の数は激減します。
例えばチェコは約2500人いますがお隣のスロバキアだと一気に減って約280人です。さらに東に行ってバルト三国の一つリトアニアだと僅か96人になります。現地の人と結婚して移住したり駐在員がいたり、留学住んでいる方など移住している事情は様々ですが、統計を紐解くとヨーロッパ内でもかなり差があるのがわかりますね。国土や人口が低いと自然と現地に住む日本人も減るでしょうが、小国であるルクセンブルクの在留邦人が約680人という数字を見ると、一人当たりのGDPが世界最高レベルというルクセンブルクらしい経済的要素もかなりの要因に見えます。
さて、欧州における在留邦人数トップ2のドイツとイギリスを比較することによってドイツ就職のメリット、デメリットが見えてきます。
言語的バリア
イギリスとドイツで色々な比較要素はありますが、一番基本的な部分ではやはり言語、コミュニケーションがとれるかどうかでしょう。英語は義務教育の段階で学びますし、あまり多くはないとは言え、映画や音楽、ドラマなどで多少は英語に触れる機会があります。日本にいる外国人も英語圏の人がドイツ語圏より多いです。
そういった意味で語学の面では、母国語がドイツ語であるドイツより英語の国であるイギリスの方が障壁は低いと言えるでしょう。もっとも、ドイツはヨーロッパの中でも有数の「英語話者人口割合の多い」国であり、ドイツで英語だけで生き延びられないかというと、またそういうわけでもありません。
日系企業数
続いて、現地に進出している日系企業数について見てみたいと思います。なぜ日系企業の話をするかと言うと、日系企業は日本人が海外で仕事を探す上で就職できるチャンスが高いか受け皿となりえるからです。日系企業であれば日本語が必要になる職種も増えるでしょうし、やはり日本の仕事文化を心も体も理解ができているのは強みになります。
もちろん現地在住の日本人によっては現地企業や多国籍企業、はたまた自分で起業している人もいますし、日系企業を敢えて避ける人もいます。しかし現地就職を目指す人にとっては日系企業の多さは現地就職の可能性にも繋がるので、ヨーロッパ移住の難易度に影響します。 こちらも外務省が公表している「海外進出日系企業拠点数調査(令和元年(2019年)以降)」に日系企業の統計があるので参照します。
イギリス、ドイツ、フランスがヨーロッパ在留邦人数トップ3カ国を占める形になっています。イギリスは欧州の在留邦人数では最多の63,653人ですが、一方で日系企業数では面白いことにドイツの約半分になっています。
ドイツとイギリスの日系企業数に差がある理由の一つにイギリスによるEU離脱、いわゆるブレグジットが挙げられると言われています。イギリスによるEUの離脱は2020年1月31日でしたが、離脱を決める国民投票は2016年の6月23日でした。ブレグジットの影響は甚大で広範に及ぶので簡単に説明できませんが、イギリスがEUを離脱することによりイギリスーEU間で不要であった貿易に手続きが生じる、追加の費用がかかる、そもそもイギリスがEU市場にアクセスできないのでは、と言った経済的な影響を受ける懸念が出ました。
その影響でイギリスの日系企業も拠点をヨーロッパ大陸内に移す動きがありました。前出の海外在留邦人数調査統計によると2015年ではイギリスの日系企業の拠点数は1,000社以上あったので、ブレグジットが日系企業の拠点に影響を与えた可能性がささやかれています。 ちなみに東京商工リサーチが2019年に英国進出日系企業の産業別拠点構成比を紹介しています。
英国進出の日系企業は707社で、5,485拠点を構えていることがわかった。現地拠点の産業は、運輸業が1,408拠点(構成比25.6%)と最も多く、次いで小売業の1,207拠点(同22.0%)やサービス業の1,010拠点(同18.4%)など多岐にわたっている (引用:東京商工リサーチ 「日系企業の英国進出状況」調査)
面白いことに、イギリスではロジスティクス関連の日系企業が強いことがグラフから確認できます。 一方のドイツですが、在留邦人数はイギリスより約2万人少ない42,135人の反面、ドイツの日系企業数は1,896社と圧倒的な数になります。なおイギリスもそうですが、在留邦人数の統計と日系企業数の統計は数年のズレがあり、特にこの数年でパンデミックの影響があるので日系企業数にも影響はあるのでその点は注意してください。
東京商工リサーチとは拠点数の出し方や各項目の出し方などが違うので単純な比較はできませんが、ドイツとイギリスでは日系企業の進出している産業が違うことがわかるかと思います。分かりやすいドイツとイギリスの違いの一つが製造業ですね。 イギリスは人口約6800万人でGDPも巨大ですが、産業にはある程度の偏りがあるのが伺えます。その一方でドイツは製造業が堅調でEUの経済においてエンジン的な役割を果たしています。ユーロにおいても中心を担っており、またドイツ発の世界的な企業も多数あり、特に自動車産業に強みを持っています。
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ワーホリビザ:イギリスは大人気、ドイツは入手しやすいものの労働に条件あり
20代の日本人にとって、ワーキングホリデーは長期で行くのに利用しやすい選択肢の一つです。滞在期間が限定されてしまうデメリットはあるものの、条件自体は難しいものではなく労働も許可されているので、ワーキングホリデーを利用して試しにヨーロッパに滞在を考えている人も多いですね。
イギリスの場合ですが、正確にはワーホリではなくYouth Mobility Schemeと呼ばれている制度になります。名前は大事ではないですが、イギリスのワーホリ事情を簡単に説明すると、最大2年間滞在でき大人気の反面、大人気過ぎて毎年応募者過多になり競争がかなり厳しいことです。競争率が高過ぎて、運が良くなければこのビザを獲得できないところがかなりの難点です。
ドイツの場合はイギリスとは様相が変わってきます。ドイツのワーホリはイギリスほど申請者も多く無いので、基本的にちゃんと手続きを行えばビザを貰えると言われがちです。また、ドイツのワーホリの一番の難点は一つの職場での最長就労期間は6ヶ月という点です。ドイツ大使館のウェブサイトにも書かれていますが6ヶ月しか働けないとなると、ドイツ人経営者のレストランではあまり好まれず、仕事探しの難易度が高くなります。日本人が経営する日本食屋では雇ってもらえるケースもあるので、仕事を狙える可能性はどうしてもピンポイントになってしまいます。 行くまでの難易度で言うとイギリスはかなり難しく、一方のドイツは非常に簡単です。しかし仕事を見つけられる難易度に関しては、滞在する都市によってイギリスもドイツも仕事を見つけられる可能性はもちろん変わりますが、最長滞在期間と一つの職場での最長就労期間を考慮すると、ドイツの方が難しいと言えます。
大卒後のビザ
ビザに関してもう一つお話ししたいのが現地の大学を卒業後のビザについてです。ヨーロッパ移住を目指す上で有効な選択肢の一つが、現地の大学(院)を卒業後にそのまま現地就職する方法です。大学卒業後のビザや進路は留学前だと中々想像しづらいですが、イギリスもドイツも現地で大学を卒業すると、そのまま一定期間滞在許可と労働許可が付与されます。
従来イギリスは移民のハードルが高く、イギリスの企業も外国人に対して労働許可のスポンサーになるのは費用や手間がかなりかかってしまうので消極的でした。しかしイギリスのEU離脱後、Graduate route visaというイギリスの大学(院)卒業後に2年、博士課程を終了して学位を得た場合は3年のビザが取得でき就労も可能です。 上手くいけばその後就労ビザ(Skilled Worker)の申請も可能ですが、この場合はやはり収入など様々な条件が出てくるので、一筋縄では行きません。この点は従来のイギリスのビザ取得難易度と同じイメージをしてもらうと良いでしょう。正直ここはまだ高いハードルだと考えておく必要があります。
新卒で見つけられる業種は限定的
イギリスの大学を卒業するとその後も一定期間就労、滞在ができますが、もう一つの大きな壁が実際の就職活動です。ビザがあるのでチャンスはありますが、上記の産業構造で説明した通り、イギリスの産業には偏りがあるので新卒での就活は難しい部分があります。イギリスの求人情報を見ると新卒向けのポジションというのはかなり少なく、「◯◯年以上の経験要」の文言が並んできます。さらにイギリスでは日本人を含めて世界中からの移民・外国人がたくさんいるので、履歴書、面接両方の段階でかなり激しい競争になります。
ドイツも現地の大学卒業後にはドイツに残って就活ができます。ドイツの場合18ヶ月の猶予があり、仕事がある場合イギリスと同様労働、滞在許可を延長させることができます。ドイツにも条件はありますが、人の話を聞いていますとドイツはイギリスほど厳しく無く、業種や職種の幅も広いので色々なチャンスがあるようです。上記でも説明したように日系企業の数も非常に多く、ドイツ語不要のポジションも多々あります。
ちなみにドイツの大学事情ですが、学士レベルだとプログラムはほぼドイツ語しか無いのでドイツ語が必須ですが、修士レベルだと英語のプログラムもでてきます。なのでドイツの大学院で修士課程をこなしてそのままドイツの大手日系企業に就職する日本人もいます。他にも大学院で在籍中にドイツ語を勉強して、卒業時にはドイツ語を駆使してドイツ現地に就職し、そのままドイツに永住する人もいるので、ドイツは残れる可能性がかなり多いと言えるでしょう。
さて、最後に結論ですイギリスはワーホリなどで一時的に行くことはできるが、長期で就職は難しい、ドイツはドイツ語の壁というデメリットはもちろんあるものの、長期的な視点で見ると長期就職、永住のチャンスがあるという大きなメリットがあります。特に、ドイツに進出している日系企業は欧州拠点のハブとしての働きを持ち、そこでの業務内容もダイナミックで、多くの現地採用日本人の人気を集めています。
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