ドイツ人の料理にかける時間は少ない?日本人との比較

在独日本人がドイツ人の家に遊びに行った時にまず驚くのが、広くてキレイでオシャレなキッチン、というのはよく聞く話です。ドイツ人はおしなべてきれい好きなので徹底的に掃除して清潔を保っている説もありますが、一般論のように言われるのが「ドイツ人は料理をしないからキッチンがキレイである」ということです。

さて、実際ドイツ人はどのくらい料理しているのでしょうか。今回の記事では、ドイツ人と日本人の料理頻度と費やされている時間について紹介していきます。

前提として・・・ドイツと日本では調理の傾向が違う

キッチンエリアに入った時に、キレイか汚いかはおもに  

(1)調理エリアの汚れ具合

(2)調理器具の多さ・スッキリと片付いているか

の2点から判断されるとされています。ドイツ料理の本などを見ていて日本人がよく抱く印象は、ドイツの料理はコンロ(Herd)を使う時間が少ない(オーブンに出し入れするタイプの料理が多い)ということです。アジア系料理と比べて揚げ物のレシピもほとんどないので日常的にコンロで多量の油を使う必要がなく、油汚れが付きにくいと思われるかもしれませんね。

また、ドイツには“kaltes Essen”(冷たい食事)文化があり、夕食はパンにハム・サラミやチーズを挟んで終了という家庭も珍しくありません。つまり、火(コンロやオーブン)を使った調理自体をしないということです。これがまず(1)の観点から見た理由と言えるでしょう。

そして(2)の調理器具に関しては、ハーブ専用のチョッパーやにんにく潰し器などです。我々日本人が日本の実家で使用していた器具などを思い起こしてみても、こちらでは色々と便利系が充実している印象ですが、キッチンが広いがゆえに全てきっちり収納されているパターンが多く、あれやこれやと見える場所に出ている家庭は少ないケースが少なくありません。裏を返せば、使わないからすぐ手が届く場所に置いておく必要がない、とも取れます。 調理の傾向から調理エリアが汚れにくい、目に見える場所に出ている物も少ない、ということで総合して「キレイ」という印象に繋がることも多々あるわけです。

ドイツ人の料理頻度・料理にかける時間

ドイツ連邦食糧・農業省の調査(2020年)によると、好んで料理をするドイツ人は約73%。その中で、ほぼ毎日料理をすると答えた人の割合は39%週2〜3回料理をすると答えた人の割合は40%となっています。コロナ禍で家で過ごす時間が長くなった分、料理の頻度は以前よりも高くなっていると報告されています。

データ出典元:Bundesministerium für Ernährung und Landwirtschaft “Deutschland, wie es isst : Der BMEL – Ernährungsreport 2020”

料理にかけている時間で見ると、少し古いデータになりますがGfKが2015年に行った調査で、ドイツ人が料理に費やす時間は5.4時間/週1日あたりで見ると約46分となっています。調査対象となっている22カ国中4番目に調理時間が短い国として報告されていますので、世界的に見ても料理に時間を費やさない文化であると言っていいでしょう(出典:GfK “Consumers attitudes and time spent cooking Cooking: Country comparison”

日本人の料理頻度・料理にかける時間

一方日本では、大多数の人が「毎日のように料理している」という調査結果が。レシピサイト運営会社の意識調査(2020年)によると、ほぼ毎日料理をしている人の割合は実に94%!ドイツでは13%もいた、ほぼ料理をしない人の割合はなんとゼロになります。

こちらも、コロナの影響で自炊時間が「増えた」(とても増えた・まあまあ増えた・少し増えた)と答えた人の割合が70%と、料理にかける時間が増加していることが報告されています。

データ出典元: 株式会社GEEK WORKS 「新型コロナウィルスによる自炊への影響」

これが一人暮らしに限定した別の調査になるとほぼ毎日自炊している人の割合は40%程度に落ちるようですが、それでもドイツの全世帯を対象にした調査結果と同じくらいに落ち着きます。

日本は外食や中食が充実していて24時間どこでも美味しい食事が買えるにも関わらず、これだけ自炊率が高いのは、料理に対する意識の高さが伺えます。ドイツに住んでいる日本人の中には、外食は高い+持ち帰りやデリバリーで手に入る食事は限られている(食べたい物がない)、という理由から自炊一択になるパターンの人が多い事でしょう。

時間で見ると、日々料理にかけている時間は平均2.2時間/日(参照:コズレ子育てマーケティング研究所、2020年)。この調査は子供がいる家庭が対象なので単純比較はできませんが、ドイツと比べて3倍近くの時間を日々の料理にかけていることになります。

まとめ

ドイツ人の食事や料理の傾向を見ていると、料理をする・しない、食事にこだわりがある・ないにはもちろん個人差がありますが、日本人と比べると総じて食(味)に対するこだわりは少ないと言って差し支えないのではないでしょうか。日本人の場合は、手間をかけてでも美味しいもの・できたてのものを食べることを重視する傾向が強いですが、ドイツ人の場合は、限られた時間を料理よりも家族団欒や趣味に使うという合理的な考えの人が多いようです。

ドイツの場合は食へのこだわりが二極化している面もあり、素材そのものというか、出どころがはっきりした食材だけを食べたいという考えが強い人はかなりいます。ベジタリアンやヴィーガンのように信条的に特定の食材を口にしない人、オーガニック食材しか買わない人、動物にやさしい環境で飼育された肉しか買わない人など、日本だとまだ少数派の人も一定数いてそれぞれ市民権を得ているのが食文化の違いとして興味深いところです。

一応ドイツ人のためにフォローをすると、ドイツ人はお菓子作りのスキルは高い人が多いと言えます。男女問わず、自分の誕生日や記念日にケーキを焼いて職場に持っていくのはスタンダードで、子供の誕生日パーティーに豪華にデコレーションされたプロ顔負けのケーキを作る人も珍しくありません。食事はわりと手抜き傾向なのに、お菓子に関しては手作り重視・労力を厭わない文化なのは非常に面白いですね。