Kita枠を貰うのは大変!?ドイツの幼稚園・保活事情を解説します
仕事を持つ親にとって避けて通れない、保育園・幼稚園の入園枠問題。日本では数年前に世間を騒がせた「保育園落ちた日本○ね」のネガティブ発言から今でも、待機児童問題が解消されておらず共働き家庭の負担になっています。子育て家庭にやさしいイメージのあるドイツでも、実は保育園・幼稚園の“Platz”(入園枠)確保競争が熾烈です。
さて、様々な人種の入り乱れるここドイツでの保活事情はどのようなものでしょうか?
(※ドイツは連邦制なので各州でシステムや申し込み方法に違いがあります。書かれた内容は州制度によって異なるため、最終的な判断はお住いの州の担当に尋ねることをお勧めいたします。)
ドイツの“Kita”とは
“Kita”とは“Kindertagesstätte”の略で、保育園(Kinderkrippe)と幼稚園(Kindergarten)の総称、就学前の年齢の子供たちが日中を過ごす託児施設を指します。保育園と幼稚園をひっくるめてKitaと呼ぶことが多いですが、それぞれ分けて話題にしたい時は保育園を“Krippe”、幼稚園を“Kiga”と略したりもします。運営は保育園単体、幼稚園単体、保育園と幼稚園一貫(同じ敷地内にある)の3パターンがあり、一貫パターンだと保育園からスライド式で幼稚園に入りやすいという事情があります(この場合、保活と幼活を2回しなくて済むという事情)。
ドイツでは、特色あるコンセプトや教育理念を持った園が多く見られます。日本でも有名なモンテッソーリ教育の幼稚園もたくさんあり、保育料も高くありません。シュタイナー学校も、人気俳優の出身校として注目されましたね。以下にいくつか特色のある運営形態の園を紹介いたします。
ドイツによくある特色ある園
・Elterninitiativ(親が運営を担う園)
親が園の方針に関与できるのがメリットですが、親同士の定期ミーティングをはじめ、食事の用意・洗濯・掃除が当番制で回ってくるなど負担が大きく、両親ともフルタイム勤務だとなかなか厳しいです。
・Steiner-Schule(シュタイナー教育を行う園)
哲学者ルドルフ・シュタイナーの人間観を教育コンセプトに掲げた園。個性尊重、子供の能力を引き出すなど自由な自己決定を尊重する方針を取っています。
・Naturkindergarten/Waldkindergarten(自然幼稚園、森の幼稚園)
屋外で遊んで学ぶのがコンセプトの園。簡素な園舎しか持たず、雨が降ろうが雪が降ろうが子供たちは外で遊びます。保護者は自然派が多い印象です。
Kitaの保育時間と保育料
日本では両親がフルタイム勤務の場合は保育園、片親が専業主婦/主夫やパートタイム勤務の場合は幼稚園に子供を預けることが多く、就学まで同じ施設に通い続けるのが一般的ですが、ドイツではどちらの施設に通うかははっきりと年齢で分けられています。最初保育園に通っていた子も、3歳前後になると幼稚園に入園し、就学まで幼稚園で過ごします。
ドイツのKitaの最大保育時間は保育園も幼稚園も変わりなく、フルタイムで働いている親にとってはありがたいサポート体制となっています。ただし、園によっては全員半日保育で預け時間が14時までというところもあったり、必ずしも親が希望する保育時間で受け入れてもらえるとは限らないので注意が必要です。
保育料も園によってピンキリで、親戚の子が通っている幼稚園は公立なので無料(食費のみ自己負担)ですが、私立の幼稚園だと月に1000ユーロを超える園もザラにあります。ドイツによくある教会系(教会が運営する園)は公立ではありませんが、保育料は月に200〜300ユーロ程度と良心的なところが多いです。
ドイツの保活・幼活事情
保育園も幼稚園も基本的にはオンラインで申し込むシステムになっています。以前は希望の園に一軒一軒申し込まなければならなかったようですが、システム化されたことで保護者側の負担も園側の負担も大幅に軽減されました。システム化以前は、限られた枠を巡って園に何度も電話・訪問・メール攻撃をしないと枠がもらえなかったとのことです。公立園はどこもオンラインで申し込み可能ですが、私立の園によっては「直接園にコンタクトを取ってください」と未だにアナログなところも見受けられます。
申し込みを行うと、枠がもらえた連絡が来るまで親はひたすらドキドキして待つことになります。審査要素として大きいのは両親の勤務状況ですが、シングルマザー/ファーザー、双子を持つ家庭、両親フルタイム勤務が優先されると言われています。また、兄弟枠もあるので、すでに上の子が同じ園に在籍していると有利に働きます。園側としては、在籍する子供の年齢や性別のバランスを見て新しい子を入園させるので、希望の園に入れるかは運に寄るところが大きいです。
申し込みから枠確定、入園までの流れ
前年9月頃〜:希望する園にオンライン申し込み(保育開始の1年前から可能)
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2〜4月頃:Tag der offenen Tür(公開日)
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審査
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3月末〜4月あたま頃:第一次結果通知
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審査
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5月頃:第二次結果通知
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審査
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6月〜7月頃:第三次結果通知
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入園契約・入園前面談
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9月頃〜:慣らし保育スタート
申し込む前に色々な園を比較・検討したい場合は、2〜4月頃に行われる“Tag der offenen Tür”と呼ばれる一般公開日に参加します。実際に園の中を見学して保育環境や教育方針を知ったり、園の先生や“Elternbeirat”(保護者会の役員)と話すことができる貴重な機会です。ただ開催が春先で、早めに申し込みを行いたい人にとってはタイミングが微妙なので、場合によっては入園の前々年(子供が1歳の時点・・早いですね!)に参加する必要があります。私立の園によってはこの公開日に参加しないとそもそも申し込みができないという場合もありますので、希望の園の情報は事前にチェックしておきましょう。
なぜ入園枠が不足しているのか
第一に、子供の数に対して保育枠が足りないという問題です。ドイツは移民政策などで若干ながら出生率が上向いており(女性ひとりあたり1.53人※)、子供の数もここ10年で約67万人(2012年)から約80万人(2021年)※に増えています。施設の設置や保育枠がこの増加に追いついていないのがひとつの原因と考えられます。
2021年の政府データによると、同年時点でKitaで保育されている子供の数(3〜6歳)は2,188,576人、幼稚園に通っている年齢の子供(2015年〜2018年生まれの4年間)の出生数は3,102,140人※。ドイツでは生まれ月によっては6歳になる年に小学校に進学する子と7歳になる年に進学する子がいるので一概には言えませんが、単純計算で約90万人分の保育枠が足りないことになります。
(※データ元:Destatis : Statistisches Bundesamt)
新興住宅地の場合は住宅建設に合わせて新しい保育園や幼稚園が作られるので深刻な状態になりにくいですが、昔ながらの住宅地ではもともとの施設数が少ない上に新設もされにくいという状況で、同じ市内でも枠ゲットの難易度がだいぶ違っています。 第二に、保育者の数が足りないという問題があります。施設はあるのに保育できる先生不足でグループが閉鎖されている例も聞きます。また、先生の数をギリギリで回している場合、病欠が重なると保育不能ということで突然休園になることもあります。親が融通の利く仕事ならいいのですが、急に予定を変えられない場合は子供の預け先探しに苦労することでしょう。