ドイツ移住に失敗する日本人のパターン5

~ドイツサバイバルは難しいのか~

欧州経済の中心地として、またワークライフバランスに優れた労働者天国との見方より、日本人の中にもドイツ就職を志す人々が後を絶ちません。前回の記事で紹介した通り、ドイツ移住を志す日本人の数は多いものの、一方で夢破れてドイツを去っていく日本人もまた多く見受けられます。

今回の記事では、前回との対比として「ドイツを去っていく日本人」のパターンを5つ解説します。

パターン1:駐在員の異動や転勤

ドイツに滞在する日本人グループの中で多くを占めるのが、本社から派遣された駐在員たちですが、彼らは基本任期があり一つの拠点や国に永住することはありません。一般的には3年から5年ほどで帰国するか、別の国に更に異動する形となります。

このパターンはドイツに派遣される時点で会社に大まかな駐在予定年数を話されていたりするので、駐在員たちは数年経ってくると「そろそろかな」とソワソワし始めます。個人の都合が反映されづらい反面、引越しなど異動に関わる費用などはかなりの部分会社がサポートをしてくれるので、負担はかなり軽減されます。

駐在員は30代〜40代の男性が多いイメージですが、中には20代や50代以上もいますし、女性の駐在員も多く見受けられます。駐在としてドイツに来た人で、ドイツの国をあまりに気に入ってしまったとか、ドイツ人の恋人ができたとかで、帰国になった時に仕事を辞めてドイツで転職や開業、起業して残ったという人の話もあるから面白いですね。

赴任時から帰任時まで、一貫して会社のサポートを受けられますし、帰国後もシームレスにキャリアが繋がっていくのでこのグループはドイツを去っていくのに大きなトラブルも無くスムーズに進んでいくことが多いでしょう。もちろん人によっては満員電車など日本的な生活のストレスが無いので、ドイツ生活を気に入って「もう日本に帰国したくない」という駐在の方もいらっしゃいますが、そんな人たちも日本に帰ったら帰ったで、ドイツにいた頃の繋がりとはご無沙汰になるのもよくある話です。

パターン2:ドイツ(ヨーロッパ)人と結婚して移住後、離婚して帰国

結婚してドイツ人配偶者との滞在ビザを取得してドイツに移住したものの、残念ながら結婚生活が上手くいかずに離婚に至るケースもよくある話です。ドイツ語能力など要件はありますが、3年間配偶者ビザでドイツに住んでいると、ドイツでも永住権(ドイツ語:Niederlassungserlaubnis)が貰えますが、逆にいうと永住権を取得するまでは離婚をするとビザが取り消しになります。

Family members of a German national You will receive your settlement permit if you have held a residence permit for three years, the family unit continues to exist in Germany and you have sufficient knowledge of German. ドイツ国民の家族 滞在許可証を3年間保持しており、家族単位でドイツに滞在し続け、十分なドイツ語の知識があれば、定住許可証を受け取ることができる。 Reference: Settling in Germany

ドイツでの離婚は日本とは違って別居などいくつか手順を踏まなければならず、長丁場になり心理的にも手間としてもかなりの負担になります。 ドイツ人配偶者と結婚して夢のドイツ移住をしたはずが、ドイツ社会に馴染めず歯車が狂い始めるケースもあります。ドイツ語でのコミュニケーションがおぼつかず、ドイツ人同士の会話に入れないためドイツ人のコミュニティに参加ができない。仕事が上手く見つからない、日本人とばかり関わっていてドイツ人家族からすると、ドイツ社会にちゃんと参加しようとしてないと見えて喧嘩になってしまうなど、国際結婚は色々な所で問題が出てきます。

gehaltneu
E-STATを元に著者作成

 ドイツを去るパターンとはある種逆ですが、話がまとまって日本に帰れた方が幸せなパターンが、子供がいる場合です。日本は2014年からハーグ条約の締結国となり、日本人視点に合わせて簡単に説明すると、ドイツでは離婚後に一方の親の同意無く子供を日本に連れていくのは認められません。

1980年に採択されたハーグ条約は、国境を越えた子どもの不法な連れ去り(例:一方の親の同意なく子どもを元の居住国から出国させること)や留置(例:一方の親の同意を得て一時帰国後、約束の期限を過ぎても子どもを元の居住国に戻さないこと)をめぐる紛争に対応するための国際的な枠組みとして、子どもを元の居住国に返還するための手続や国境を越えた親子の面会交流の実現のための締約国間の協力等について定めた条約です。日本人と外国人の間の国際結婚・離婚に伴う子どもの連れ去り等に限らず、日本人同士の場合も対象となります。 引用:ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)外務省

ドイツで子育てをして離婚に至った場合、子供を置いて日本に帰ることもできないのでドイツに残らざるを得ません。この時に正社員の仕事があれば良いですが、仕事が無かったり収入が不安定な場合は金銭的な問題と子育て両方の問題が出てくるので非常にややこしくなります。ここまでくると、日本に帰りたくても帰れないというジレンマに陥ってしまいます。

パターン3:大学(院)中退して留学失敗の上帰国

夢を持ってドイツに留学する人も毎年いますが、その分一定程度大学の勉強に付いていけず中退する人がちらほらいます。ドイツの大学は日本の大学のシステムとは違い自習に重きが置かれており、プレゼンや課題提出など在学中は死に物狂いの勉強が必要になります。

大学のプログラムがドイツ語にしろ英語にしろ、第二、第三言語での勉強は非常に苦しいものがあります。 ドイツの大学の中退率は日本よりはるかに多い約3割と言われており、母国語がドイツ語でない日本人の場合その中退率はさらに高くなることが予想されます。勉強に付いていけない人もいれば、試験に合格できず単位を落とす人、新しい環境に馴染めず鬱になっていく人など理由は様々です。

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パターン4:ドイツの大学(院)卒業後に日本帰国

学生ビザでドイツ留学に来た人もいずれは卒業という人生の岐路にぶつかります。ドイツでの大学(院)生活も卒業した後も延々とドイツに残ることはもちろんできないので、さらに進学するなり、就職するなり日本に帰国するなり選択が必要になります。帰国と言っても大まかに2つのケースに分かれていきます。

ケース1:日本で就職のため帰国

日本にいるようなフィジカルな就職活動こそできないものの、最近は日本でもインターネットを通じて就活ができる部分が多くなりました。日本にいるよりはハンデはありますが、それでも会社側も事情を汲んで特別にオンラインで面接をさせてくれることもあります。限られた例ですが、ドイツ留学中にオンラインで日本で就活を行い、日本にある某大手外資系企業から内定を貰って卒業・帰国まで勤務開始を待ってもらった人がいます。

最初からドイツ留学後に日本に帰るのを前提にしている人もいますので、こういった人たちはやり切った感があって満足してドイツを去っていきます。

ケース2:ドイツで仕事が見つからないため帰国

ドイツの大学卒業後、ドイツ滞在を希望するものの仕事が見つからないため泣く泣く帰国するパターンもあります。留学中は課題や試験、卒論に追われてドイツでの就活まで手が回らず、やっと卒業したと思ったらドイツでどう就活をして良いかわからず、途方に暮れてしまう人も存在するわけです。ドイツにはヨーロッパのみならず、世界中から人材が集まってくる面もあるため、就活はかなり競争が厳しい面も事実なのです。ヨーロッパの言語を二つ三つ使えるようなヨーロッパ人はゴロゴロいるので、ドイツ現地企業から内定を貰うのは簡単ではありません。

2017年の少し古い記事ですがBusiness Insiderに興味深い記事があります。

現地就職したのは6% ディスコキャリタスリサーチが2017年の2月~3月にかけて行った調査によると、日本人で海外留学経験のある9割以上(ぜひ働きたい=72.8%、どちらかといえば働きたい=19.1%)が海外での勤務を希望していることがわかった。これは留学経験のない学生の45.2%(ぜひ働きたい=19.2%、どちらかといえば働きたい=26%)と比べても極端に高い。 (中略) しかし、現実はそう簡単ではない。JASSO(日本学生支援機構)が2011年に行った日本人留学生の追跡調査によると、留学後に現地就職した学生の割合は5.8%。2004年の2.8%と比較して増えてきてはいるものの、留学生にとってまだまだ現地就職の壁は高い。 引用:「日本で就職せざるを得ない」グローバル就活に挑むエリート留学生がぶつかる壁

この記事は主にアメリカについてですが、ドイツも似たような側面があります。ドイツ大卒という肩書きは箔がつく反面、「良い企業で働きたい」というプライドも生まれてきます。ヨーロッパでのキャリアを積んでいないのに、ドイツで世界的な多国籍企業や超大企業にばかり応募してていて面接にすら呼ばれないのは残念ながらよくあるケースです。

良くも悪くもドイツ大卒というプライドが本人の妥協を妨げてしまい、気づいた時には資金が尽きてしまった、就職の機会を逃してしまったという人も見てきました。こうなると折角ドイツの大学を卒業したのに、最後の最後で躓いてしまって成功したのに落ちこんで帰るという非常に後味の悪い結果になります。

ドイツに限らずヨーロッパでは日本のような就活シーズンも新卒入社も存在しないので、早い段階での情報収集が鍵になります。個人的なアドバイスですが、例えばドイツには日系企業が多く進出していても、日系企業もいつでも人材を募集しているわけではありません。日系企業は募集をオープンに行わないこともあるので、卒業が見えてきた段階で、在独日系企業など自身の持ち味が活かしやすい企業とのパイプを持ったリクルーターに応募しておいて、担当者からアドバイスを貰っておくのがおすすめです。

パターン5:試用期間でクビ

日本では試用期間でクビといったケースはほとんどありませんが、ドイツのキャリアでは試用期間は現地人にとっても一つのハードルとして捉えられています。

新しい雇用契約を結ぶときは一般的に6ヶ月の試用期間が課せられていて、この期間内であれば両者合意が無くても本契約と比較して簡単に仕事を辞める、辞めさせることができます。なのでドイツで就職ができても簡単には喜べず、この試用期を超えるまで安心することはできないというわけです。在独日系企業は現地企業ほどドラスティックに試用期間ですぐにクビにすることはあまり多くありませんが、多国籍企業やドイツ現地企業だとこの試用期間で「会社に利益をもたらせる存在」をはっきりとアピールする必要があります。そうでないと、会社からすれば他の人材を雇った方が良いと思われてあっさり解雇されてしまいます。

特に試用期間で解雇されてしまうと、失業保険の受給資格が無いケースもあるので一気に追い詰められてしまいます。

結論:ドイツサバイバルは難しい

ドイツ移住は難しい部分も多々あります。全員が全員成功してやっていけるわけではありません。それでもドイツを去っていく人にも上で紹介したように、ある程度のパターンがあります。

やはり、就活の備えが無かったり、誤った企業群への応募ばかりを繰り返していると、採用のチャンスが失われていく傾向にあります。そんな中で、上述の通り日本でのキャリアを尊重し、ドラスティックな解雇をすることが比較的少ない、在独の日系企業など、自身の強みを活かせる会社への応募は光明となるのではないでしょうか。

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