ドイツにおけるペット事情!犬派と猫派、どちらが多い?
ドイツに来たばかりの日本人は、ドイツでは犬を連れて外出する人をよく見かける印象を得るのではないでしょうか。レストランや電車にも同伴できるし、犬を連れての宿泊が可能なホテルも多いので一緒に車で旅行する人も珍しくありません。街中でよく見かけるぶん、ドイツでは犬派が多いのかな、ともしかしたら思われるかもしれませんが、実際には面白い結果になっています。今回の記事では、ドイツにおけるペット事情、特に犬、猫事情について深掘りしていきたいと思います。
ドイツのペット事情
本題に入る前に少しドイツのペット事情についてお話しします。ドイツはとてもアニマルフレンドリーで動物愛護意識の高い国です。犬や猫を飼いたいと思ったら、日本のようにペットショップからではなく、動物保護施設(Tierheim)やブリーダーから直接引き取らなければなりません。
犬を飼う場合、例外も認められているものの基本的に毎年「犬税」(Hundesteuer)を納めます。犬税というからには、糞の清掃や糞始末用の袋の設置など犬に関することに使われているのかと考えますが、地域の設備投資や環境整備など他の地方税と同じように一般的な税収として扱われます。ちなみに、飼うことで税金が課せられるペットは犬だけで、猫やうさぎなどドイツでもポピュラーな他のペットたちに対しては無税です。
犬税の費用は州によって異なりますが、おおむね1頭目で90〜186ユーロ(2頭目以降はもっと高くなります)、闘犬に至っては別枠で1頭1000ユーロ(!)近くの支払い義務がある州もあります。もちろん飼育にもお金がかかるし、経済的余裕がないとドイツで犬を飼うことが難しいことを物語っていますね。
ドイツではたいていの場所に犬を連れて入れますが、それゆえ犬の躾に関しては厳しい目を向ける人が多い印象があります。ほとんどの犬たちはとても躾が行き届いていて、むやみに吠えたり噛み付こうとしたりする犬はめったに見かけません。早朝や深夜に無用に吠える犬がいるとご近所さんに白い目を向けられますし、「訓練学校(Hundschule)に入れた方がいい」と冷たい指摘をされてしまうことも。
ドイツ人は犬派?猫派?
こんな事情なので、ドイツでは当然「犬派」が多いんだろうな、と思われますが、意外にもドイツでは圧倒的にペットとして猫を飼っているご家庭が多いという結果が出ています。市場調査機関Skoposが7000世帯を対象に行なった調査(2021年)によると、ドイツで飼育数・飼育世帯数ともに1位に輝いたのは「猫」。飼育数は約1670万、飼育世帯数は全体の26%にのぼり、2位の「犬」に飼育数で600万以上の大きな差を付けているのです。犬税のような税金が猫にはかからないことや、多頭飼いしているご家庭が多いのこともこの結果の背景にあるかもしれません。
1位:猫(飼育数1670万、飼育世帯数26%)
2位:犬(同1030万、同21%)
3位:うさぎやハムスターなどの小動物(同460万、同5%)
4位:鳥(同310万、同3%)
5位:アクアリウムで飼育する水生生物(同230万、同4%)
6位:庭の池で飼育する水生生物(同140万、同3%)
7位:テラリウムで飼育する昆虫や小動物(同120万、同2%)
トータルではドイツ全土で約3470万の数の動物が家庭で飼育されており、ペットを飼っている世帯は全世帯の47%。約半数の家庭が何かしらの動物を飼育していることから、ペットと生活するのがとても身近な環境であることが分かります。ドイツ動物学専門家中央協会(Zentralverbands Zoologischer Fachbetriebe Deutschlands e.V.)の会長は、コロナ禍でペットと過ごす時間が増加し、新たにペット(特に猫)を飼う人が増えたことを指摘しています。 また、子供がいる家庭では69%(前年比プラス3%)が何かしらのペットを飼っていることが特徴的です。確かに、動物と一緒に暮らすことは子供の情操教育に良いとされていますね。動物の世話を通して責任感が育まれるだけでなく、幼少期に動物に触れる機会が多いほど後のアレルギーを発症しにくくなるという研究結果(参考:”Pet-keeping in early life reduces the risk of allergy in a dose-dependent fashion”(Bill Hesselmar, PLoS One . 2018))も報告されています。
まとめ
調査結果から、ドイツには実は「猫派」が多いということが分かります。猫は税金がかからず、犬と違って散歩も不要で手間がかからないというのが猫人気を支える理由と考えられます。犬を連れている人を見る機会が多いことからドイツには「犬派」が多いだろうと予測したわけですが、猫は家の中で飼われていることが多いため犬に比べて日常的に見かける機会は圧倒的に少ないです。 保護施設のおかげで野良猫や野良犬がほとんどいないのは、地域の環境保全や治安、動物愛護の観点から日本が見習うべき点だと思います。コロナ禍でペットの飼育数が増えたのは日本も同じですが、癒しを求めるだけでなく、飼う以上は最後まで面倒を見る責任と覚悟を持って家族に迎えなければいけませんね。